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zoom RSS オバマ宣誓のミスと swear、および名言の謎

<<   作成日時 : 2009/01/25 13:10   >>

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前回紹介したオバマ宣誓の「とちり」をめぐるCNNのリポートには、swear のもうひとつの意味にひっかけて面白さを出しているところがある。swearwords という単語を使っているのがそれで、動画の見出しにも A swearing-in worth swearing at. とあるように、「ののしり言葉(を使う)」という方の意味である。

もう一度、CNNのリポートを見てみよう。



2つの意味はずいぶんかけ離れているように見えるが、

- [初12c以前;古英語 swerian (誓う、(神に向かって)話す)] (ジーニアス英和大辞典)

- みだりに神の名を呼ぶ、神の名を汚す、もったいない[ばちあたりな]ことを言う、悪口を言う (「リーダース英和辞典」)

といった説明を見ると、なるほどつながるところがありそうだな、と思う。

私は辞書を引いた「ついで」の学習を心がけているが、swear の項を読んで気づいた発見や表現などをいくつか書いてみたい。

まず、「ジーニアス大英和」には、

- When angry, count a hundred; when very angry, swear.

という Mark Twain の言葉が載っている。「腹がたったら100まで数えよ、非常に腹が立ったら啖呵をきれ」と訳されていた。

いかにもマーク・トウェインらしいと思ったが、何かの作品に出てくるものだろうか、とネットで検索したら、面白いことがわかった。「ジーニアス」に出ている上記の形よりも、

- When angry, count to four; when very angry, swear.

の方が、ずっとヒットした数が多かったのだ。

count のあとに to がついているのはまだいいとして、数える回数が25分の1と、大幅に違う。ヒット数は「4つ数えろ」の勝ちだったが、マーク・トウェインが言ったのは本当はどちらなのか。時間のある時にじっくりと調べてみたいが、どなたかご存知の方はいないだろうか。

swear の句動詞やイディオムはいくつかあるが、swear black is white (あるいは talk black into white, prove that black is white) は、「[未来形・条件節で](目的のためには)手段を選ばない、黒を白と言いくるめる」という意味だそうだ。ここでの swear は take an oath というより say or affirm earnestly and with great conviction という定義に沿うものだろう。

「黒を白と…」という日本語の表現は発想が似ているが、もしかしたら英語(あるいは他の外国語)から来ているのだろうか。「黒と白」といえば、以前取り上げた Two blacks don't make a white. もあらためて思い出した。

もうひとつ、惜しくもすでに絶版となっている「岩波英和辞典」は、CNNのリポートに出てきた swearword に「べらんめえ言葉」という訳語をあてていた。適切かどうかはわからないが、面白い。

さて余談だが、しばしば取り上げているTVドラマ "Star Trek the Next Generation" の日本語版には、swear が持つ2つの意味を取り違えていると思われるストーリーがある。

乱暴な口をきいた相手にののしり返した登場人物に対し、その相手が、"You swear well." と褒める(?)場面があるのだが、これが「堂々たる誓いだったな」というセリフになっているのだ。これはやはり curse の方の意味だろう。

さらに脱線すると、ののしりあいは異星人の言葉で交わされている。この架空の言語はシリーズを通じて時々出てくるが、お遊びとはいえかなりしっかりと考えられているようで、辞書がつくられているほどだ。

この場面で、やりかえした登場人物の言葉は Qu'vath guy'cha b'aka! とスーパーされている。この異星人の言語についてのサイトのひとつは、この表現について various curses という注を、また fe'l Kina sal B'aka という別の表現について、"baQa' is listed in The Klingon Dictionary Addendum as a general invective curse. This may be the last word in this phrase." と説明している (http://www.angelfire.com/md/startrekkie1701/klindic.html クリンゴンとは異星人のこと)。

そこで想像したのだが、この単語は日本語の「バカ」から取ったのではないか。「スター・トレック」の制作関係者には、日本のアニメに詳しい人や日系人も多いということだし。

オタク系の余談が過ぎたので、最後にまじめな話。swear について「アンカーコズミカ英和辞典」は

キリスト教をはじめ一神教の世界では、神の名をみだりに唱えたり、神を冒とくするようなことばを吐くことを禁じている。以前ほどの厳格さはないにせよ、現在でもその傾向は色濃く残っていて、Oh, my God!のような日本人になじみの間投詞的表現もキリスト教徒は使う場所や時を考えて使用する。

また「ジーニアス大英和」は、

swearing (誓言)とは本来神や神聖な事物にかけて誓うことであるが、みだりに神名を用いるのはキリスト教では神への冒涜でありタブー視されている。最近では、若い世代を中心にこのタブーも崩れてきているが、教養のある人は Jesus, God, damn などの代わりにそれぞれ gee, gosh, darn などの婉曲語を好む。(以下略)

という説明を載せている。こうした言葉をやたらと口にしている日本人を見かけることがあり、本人はいかにも英語を話している気分になるのかもしれないが、いかがなものか。学校の授業などで「コミュニケーションとしての英語」に一層の力を置く傾向が強まっているが、こうした「非ネイティブとしての大人の言葉遣い」といった面にも学習者の関心を向けるようにしてほしいと個人的には思う。

さて、最高裁長官の語順の誤りをめぐってさらに書くつもりでいたが、swear の話が長くなったので、次回に続けることにしたい。


参考エントリ:
オバマ宣誓と分離不定詞と「スター・トレック」
オバマ宣誓の「とちり」
派手さはなかったオバマ就任演説
タンゴは1人では踊れない
「岩波英和辞典」の思い出
充実の「アンカーコズミカ英和辞典」
「背景知識・雑学」一覧
「スター・トレック」一覧

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