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zoom RSS Deep Throat の正体・英単語編

<<   作成日時 : 2006/10/12 23:41   >>

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ウォーターゲート事件で、ボブ・ウッドワード記者に極秘情報を提供した謎の政府高官につけられた Deep Throat とは、実は事件当時、話題になっていたポルノ映画のタイトルである。このあだ名をつけたのはウッドワードの上司だ。先日取り上げたウッドワードの著書 "The Secret Man" には、次のように書かれている。

The Post's managing editor, Howard Simons, had dubbed the source Deep Throat, after the pornographic movie of the time, because the interviews were technically on "deep background"--a journalistic term meaning that the information can be used but no source of any kind would be identified in the newspaper.

今ではこの言葉、「内部告発者」 an anonymous informant giving damaging information の意味で一般名詞化している。同じウッドワードの本から。

...It meant that reporters, whatever they covered, had to find the inside stories, get to the bottom of things, and find the Bookkeepers and the Deep Throats if possible.

lower case にして deep throat と綴ることもある。こちらの定義は載っていても、元となった映画とそれに関連する(ここに書くのははばかられる)意味の方は載せていない辞書も多いようだ。

上記の文で the Bookkeepers とあるのは、ウォーターゲート事件の取材で、ある経理担当者がやはり貴重な情報をもたらしたことから来ていると思われる。余談だが、日本語の「簿記」は、英語の bookkeeping の音をまねて作られた言葉だということだ。

ところで自宅や書店にある辞典で Deep Throat をひいてみたら、いくつか気になる記述があった。

a. Watergate 事件の情報提供者の政府高官のコードネームで、「のどの奥に秘密をたくさん持つもの」の意味。
b. Watergate 事件の情報提供者の使用した仮名から。
c. Carl Bernstein 記者 と Bob Woodward 記者が、彼らに情報をもたらした「内部通報者たち」をそう呼んだ。

説明 a. は、もともとこのような意味があったわけではないと思われるので、そうした誤解を与えかねないのではないだろうか。次の b. は、本人がこう名乗ったという意味なら、 そうではないので不適切。c.は、Deep Throat は最初から一人として描かれていたので(実際そうだったのだが)明らかに誤りだ。あら捜しのようだが、執筆者がちゃんと調べていないことがバレバレである。

ウッドワードの著書によると、面白いことに、ディープ・スロート本人はマスコミから「あなたがディープスロートではないか」と取材を受けたことがあり、その際、否定をしたうえで「複数の情報源をあわせてそう呼んでいるのではないか」と述べたそうだ。

Felt (= Deep Throat の実名) told the (Wall Street) Journal he thought that Deep Throat was a "composite." He was the first person I know of to float that theory--another false trail and superb cover for Deep Throat.

余談だが、元祖 "Deep Throat" に主演した Linda Lovelace は、ほとんど強要される形でポルノ女優となり、この作品で名が知られるようになった後に反ポルノ活動に身を投じ、数年前に交通事故で死亡するという、波乱に満ちた一生を送った。その昔、雑誌などを読んでいると時々お目にかかる名前だった。

私はたまたまウォーターゲート事件のおかげで Linda Lovelace のことを知ったが、こうした流行・社会現象に関する言葉は、辞書では歯が立たず、本当にお手上げだ。ありがたいことに、今ではインターネットのおかげで随分と疑問点が解消できるようになった。

ところで、自分が持っていない辞書の説明を見ようと立ち寄った書店で "The Secret Man" の邦訳を見つけ、拾い読みをした。辞書の不適切な記述を読んだばかりで、意地悪な気持ちになっていたせいもあるが、読了まもない原書の記憶に照らして、誤りではないかと思われる訳が2、3か所あるのに気づいた。

急いでつけ加えると、なるほどうまい訳だなと思ったところも多々あったし、翻訳では草稿段階で訳者に渡ることもあるそうなので、原本の最終決定稿とは異なる箇所だったのかもしれない。それならそれで、翻訳者や編集者には、確定版と最終的につきあわせてほしいところだが、忙しい世の中、なかなかそうはいかないものなのだろうか。


関連エントリ:
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