bewitched, bothered, and bewildered

オバマ氏に関連して、前回 signed, sealed, and delivered というイディオムとスティーヴィー・ワンダーの曲について書いたが、まったくの連想で、"bewitched, bothered, and bewildered" という歌詞が出てくるスタンダード・ナンバー Bewitched について少し書きたい。

ロマンチックなメロディに相手への思いを(やや大げさなくらいに)歌い上げた歌詞、名曲だと思う。何人かの歌手のCDを持っているが、素直な声や歌い方、あるいは、メロディラインをちょっと崩して個性を効かせた歌唱、どれも聞き入ってしまう。どんなタイプの歌手や編曲にも合うような作品ということだろうか。オリジナルは "Pal Joey" というミュージカルにあるナンバーで、女性登場人物の歌のようだ。しかしスタンダードの名曲とあって男性歌手も取り上げている。

以前も書いたことがあるが、スタンダードナンバーの多くのは前置きにあたる verse と本編の chorus という2つの部分からなる。その時に例に引いた Stardust という作品は、verse が本編と負けず劣らず魅力的なメロディを持つと個人的には思うが、この Bewitched については、"I'm wild again, beguiled again / A whimpering, simpering child again / Bewitched, bothered and bewildered am I" と歌われていく chorus がやはりすばらしい。verse 抜きで chorus から歌う録音も目立つように思う。

英語的には "whimpering, simpering" という韻を踏んだところが印象に残るが、この whimper, simper といった単語は、その前の beguile と並んで, 私ごときの英語のレベルではなかなか引っかかってこないし、ましてや自分から使えるものではない。この作品に触れていなかったら、ずっと知ることもなかった単語かもしれない。

ちなみに手持ちのCDをみると、この作品の邦題は、「魅惑されて」と「ビウィッチト」にわかれている。前者は何となく大時代的だ思うが、しかし後者だと何のことやらわからないのではないか。

最近聴いたCDで印象に残っているのは、ピアノ伴奏だけで歌った ミリー・ヴァーノン Millie Vernon によるものだ。「幻の歌手」扱いもされているようだが、このアルバムが録音された2002年、彼女はすでに70歳を越えていた。さすがに声に年齢は隠せず、一般向きのCDではないかもしれないが、独特の味わいがある。Bewitched は5分以上に及び、収録曲の中でもっとも演奏時間が長く、熱唱を聞かせている。


パッション・オブ・ミリー・ヴァーノン
ミリー・ヴァーノン


参考エントリ:
signed, sealed, and delivered
「ジャズの英語」
「映画・テレビ・音楽から」一覧