「ザナドゥ」と「キサナドゥ」(「桃源郷」その4)

前回の Shangri-La 同様、英語学習とは別のところで覚えた単語をもうひとつ。私が大学生の時、「ザナドゥ」 Xanadu という映画のサントラがヒットした。この名が、当時営業していたディスコや60年代のヒット曲に使われた「キサナドゥ」と同じであることは、すぐにはわからなかった。

辞書で意味と由来を確かめてみよう。

- a beautiful idyllic place
[Mid-20th century. After the residence of Kublai Khan in Samuel Taylor Coleridge's poem Kubla Khan (1816)]

- a place of great beauty, luxury, and contentment.
[Origin: S.T. Coleridge's modification, in the poem “Kubla Khan” (1797), of Xandu (17th century sp.), modern Shangtu, the site of Kublai Khan's summer residence in SE Mongolia]

- Mongol city founded by Kublai Khan, 1625, Anglicized form of Shang-tu. Sense of "dream place of magnificence and luxury" derives from Coleridge's poem (1816).

この単語も、音楽などいろいろな分野で使われている。Wikipedia には Shangri-La のような項目としてまとめた記述はないが、次のURLが手がかりの一つになる。ビル・ゲイツの邸宅が Xanadu 2.0. と呼ばれているというのがおもしろい。
http://en.wikipedia.org/wiki/Xanadu_(disambiguation)

ただ、さすがに日本のディスコ「キサナドゥ」や洋楽のカバー曲「キサナドゥの伝説」は書かれていない。ディスコといえば事実上絶滅したと思っていたが、最近、「アラフォー」世代などをターゲットにして復活の動きがあると聞く。「キサナドゥ」もそのひとつらしい。今や、いわば「アラフィフ」(?)に近い私には行ってみる気力や体力はない。

ついでだが、Xanadu とキサナドゥのように、英語の発音と日本語の呼称との間にかなりの違いがある単語としては、以前取り上げたこともある「キシリトール」 xylitol が思い浮かんだ。さらに元素の「キセノン」 xenon もそうである。

この xen-, xeno- とはギリシャ語で strange とか stranger ということだそうで、これに始まる単語は xenophobia (外国人嫌い)のようにいろいろある。something strange という意味になる xenon から古代の哲学者ゼノンを連想したので調べたら、英語では Zeno であった。

さらに辞書を眺めると、ソクラテスの妻で悪妻の代名詞となっているクサンチッペ Xanthippe、またクセノフォン Xenophon や古代ペルシャの王クセルクセス Xerxes、現代音楽の作曲家クセナキス Xenakis など、まだまだある。まごつくことがないのは、複写の意味で一般名詞・動詞化している Xerox くらいであろうか。

なおクセルクセスを題材にしたヘンデルのオペラは「セルセ」 Serse というタイトルになっているが、これはイタリア語であろうか。この作品の中にある「オンブラ・マイ・フ」 Ombra mai fu というアリアは、クラシックを知らない人でも耳にしたことがあるのではと思われる有名なメロディを持ち、かつて日本のウィスキーのコマーシャルにも使われていた。

さらについでだが x のあとに i がつく中国由来の言葉は最初の子音が sh- のように発音されるようで、さらにややこしく感じる。Xanadu の由来になったのは Shangtu なので音と綴りの間に関係がありそうだが、私は中国語は知らないので確かなことはわからない。

最後の余談だが、映画サントラの「ザナドゥ」は、全盛期のオリヴィア・ニュートン=ジョン Olivia Newton-John やエレクトリック・ライト・オーケストラ(ELO)など豪華メンバーによる名曲揃いで、私は今でもCDをよく聞いている。音楽に比べると、オリヴィアのほか往年のジーン・ケリー Gene Kelly も出演した映画はまったく当たらなかったという、普通とは逆の珍しい作品となった。

面白いことに、最近これをリメイクしたブロードウェーのミュージカル版は大当たりして評価も高いそうだ。私は少し前に、YouTube でそのリハーサルと出演者インタビューの映像を見つけて楽しんだ(今も見ることができるかはわからない)。ミュージカル版のCDも出ているが、ネットでサンプルを聞いた限りでは、音楽そのものはオリヴィアらのオリジナル盤にはかなわないとの印象を受け、まだ手を出していない。


ザナドゥ
オリヴィア・ニュートン=ジョン エレクトリック・ライト・オーケストラ
ソニーレコード

参考エントリ:
シャングリラ(「桃源郷」その3)
「桃源郷」さまざま(その2)
「桃源郷」さまざま(その1)
Elysium と「自由」の第9のことなど
「チック・コリア&ゲイリー・バートン・イン・コンサート」
「固有名詞にちなむ表現」一覧
「注意したい発音」一覧