「さすが」は英語で何というか

先日読んだアーサー・ヘイリー Arthur Hailey の "The Evening News" は、旅客機が空港に緊急着陸する場面から始まる。炎に包まれた旅客機を空港に居合わせたテレビのクルーが撮影し、そのスクープ映像をすぐさま衛星回線で放送中のニュースに送り込む。そこで目をひいた表現があった。

本社で、送られてきた映像を最初に見たビデオ編集の担当者が、別のフロアにいる番組の最高責任者であるプロデューサーに電話で印象を語るのだが、

Now, by phone, Chuck Insen, who was in the broadcast control room, demanded, "How is it?"
Kazazis told the executive producer, "Fantastic! Beautiful! Exactly what you'd expect of Harry and Minh."

この "exactly what you'd expect of ..." を見たとき、とっさに思ったのは、これは日本語でいう「さすが」ではないか、ということだった。

手元の和英辞典で「さすが」を引いてみると、文脈によっていくつかの表現が書かれているが、その中に、

- Just like [what you'd expect from]...
- Just as you'd expect from...
- as (you may) expected...

などがあげられていた。私のカンもまんざらではなさそうだ、とちょっぴり自慢してみる。

もちろん、「さすが」といいたい時には英語でいつもこうした表現を使えばいい、というわけではないだろう。この例に限らないが、1対1の対応として単純に考えないよう、その点は注意が必要だ。

ところで余談だが、「さすが」は漢字で「流石」と書く。なぜそうなるのか、不思議だとは思いつつ、これまで調べたことはなかった。

ネットで探ったところ、この表記の由来となったのは、「漱石枕流」(そうせきちんりゅう)という言葉であった。夏目漱石のペンネームにもなった故事で、意味は、負け惜しみが強いことや強情に言い逃れをすることだそうだ。

昔、中国のある人が、「流れに漱(すす)ぎ石に枕す」と言うべきところを「石に漱ぎ流れに枕す」と間違ったものの、誤りを認めようとせず、「流れを枕にするのは耳を洗うため、石で漱ぐのは歯を磨くため」と言い張った、という内容だ。

しかし、由来となった話はわかったものの、肝心の「さすが」がなぜ「流石」になるのかの理由はやはり不明のままだ。

ネットには、この故事の言い逃れを「さすがにうまくこじつけたものだ」と感心して、話に出てくる「流れ」と「石」をくっつけて、「さすが」にあてることにしたという説もあった。本当だとしたら、これこそこじつけのような気がして、ちょっと力が抜けてしまった。


関連:
読んだ本:The Evening News (Arthur Hailey)