読んだ本:The Evening News (Arthur Hailey)

アーサー・ヘイリーといえば、私が10代の頃、泣く子も黙るベストセラー作家として名を馳せていた。1990年代後半に最後の小説を出版し、数年前に亡くなったが、あっという間に忘れられていったように思う。そのヘイリーの "The Evening News"(1990年)を読んだ。以下、多少のネタバレがある。

正直いって、かなり出来の悪い作品だと感じた。まず、いくらなんでも長すぎる。私の読んだ Corgi 社版ペーパーバックで640ページもあった。そして、この長さでも読者を引っぱっていく展開と仕掛けに欠ける。

前半では、テレビニュースの制作過程や、外国のテロリストが人気キャスターの家族を拉致するための準備や工作が描かれ、まだ面白いものがあった。しかし誘拐された家族の救出劇を描く後半になると、起伏と説得力が感じられなくなる。

家族の発見と救出のため、キャスターの同僚たちが独自の調査報道チームを立ち上げるのだが、理にかなった取材(=捜査)の成果というより、偶然や幸運に支えられて真相に迫っていく展開で、いくら小説とはいえもっともらしさがない。チームが、調査の結果をテレビニュースで特ダネとしてオープンに伝えながらも、プロのテロリストを出し抜いて、ペルーのジャングルの奥地から家族を発見・救出してしまうのは、いくらなんでも無理がありすぎる。

また、”業界もの”作家のヘイリーには、「人間が描けていない」という批評がずっとつきまとっていたが、それを意識したのか、この作品では登場人物について書き込もうとしたように感じられた。しかし、さして深みがないうえ、かえって冗漫な印象を与え、逆効果になっている。

お得意の”業界もの”としても中途半端だった。非マスメディア企業によるネットワークの買収劇、またニュースの内容にまで介入しようとする新経営陣といった興味深いテーマを取り上げているのに、十分に掘り下げられていない。

冒頭に書いたように、売れっ子作家だったヘイリーも、いまや書店で作品を目にすることはほとんどなくなってしまった。”業界もの”が、時代とともに古くなるリスクを抱えているのは確かだ。しかしそれを考えに入れたとしても、今回の作品を読むと、ヘイリーの名が人々の記憶から去りつつあるのも仕方がないのでは、と厳しい感想を持たざるを得なかった。


The Evening NewsThe Evening News
Arthur Hailey

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