矛になったイージス(aegis)

衝突事故に巻き込まれた乗り物は潰れる、というイメージを持っていたが、先日起きたイージス艦の事故では、漁船の船体が2つに切断された形になっていたので驚いた。aegis とはギリシャ神話の大神ゼウスが持つ「盾」で、転じて「保護」も意味するが、防衛システムの名称に使われ、今やこちらの方がよく知られているのではないかと思う。

Wikipedia で aegis を見ると、

- "AEgis" has entered modern English to mean a shield, protection, or sponsorship, originally from the name of the mythological protective shield of Zeus.
( http://en.wikipedia.org/wiki/Aegis )

modern English とあるので、神話に由来するとはいえ、英語の語彙に入ったのはそう古いことではないのだろうか。そこで語源を見ると、18世紀の頃とあった。

- Origin: 1695-1705; < L < Gk aigis shield of Zeus or Athena, prob. from aig- (s. of aix goat) + -is n. suffix, from a type of shield made of goatskin

私が最初にこの単語を覚えたのは under the aegis of という表現によってだった。

- with the protection or support of someone or something, especially an organization:
The project was set up under the aegis of the university.

ある辞書は formal という注をつけていたが、神話から来た単語だけあって、そうだろうなと納得する。確かにこの表現に接するのは、お堅い社説やコラムという印象がある。

オンラインの The American Heritage Dictionary では、aegis 自体の定義で使われている例文がすべてこの熟語になっていた。長いが引用してみよう。

1. Protection: a child whose welfare is now under the aegis of the courts.
2. Sponsorship; patronage: a concert held under the aegis of the parents' association.
3. Guidance, direction, or control: a music program developed under the aegis of the conductor.
4. Greek Mythology The goatskin shield or breastplate of Zeus or Athena. Athena's shield carried at its center the head of Medusa.
( http://www.bartleby.com/61/90/A0109000.html )

「アイギス」などと表記される神話の盾には山羊の皮が使われていたが、現代の「イージス」は、刃物のように漁船を切り裂いた。最先端の盾(探知レーダー)を持ちながら他の船が接近していることを見逃し、逆に「矛」として、保護すべき国民の生命と財産に害を与えた。これ以上の矛盾があろうか。


参考:
「背景知識・雑学」一覧