on the double

前回取り上げたマイナスイメージを持つ double にからむ表現ではないが、おまけとして on the double をあげておこう。私がこれを知ったのは、首を傾げるような翻訳によってだった。それで新しい表現を知ったのだからプラスになったというべきだろうか、というのは我ながら意地の悪い態度である。

ある小説を読んでいたら、登場人物が部下に命令をしたあと「ダブルで」と付け加える場面があった。いったいこれは何だ?と思った。私の知る限り、日本語で「ダブルで」というのはウィスキーを注文する時くらいではないだろうか。

そこで英和辞典で double を引いて見つけたのが、この表現である。ここでは英英辞典の定義と例文を書き写しておこう。イギリス英語では at the double になるようだ。

- without delay; rapidly; immediately
The fire engines came on the double.

- at running speed; very fast
He disappeared on [at] the double.

この小説、原文にあたったわけではないが、まずこの表現に間違いあるまい。つまり部下に対して「急いでやれ」「すぐに取りかかれ」と求めたというわけだ。

どうやらまともに辞書も引かずに訳したらしい翻訳者も、また日本語ではあまり聞かないような訳を通してしまう編集者も困ったものだが、冒頭に書いたように、それで英語の表現をひとつ覚えたのだから、あまりカッカせずに大目に見ようと思った。


参考:
「数にちなんだ表現」一覧