「ファインディング・ニモ」

子供を水族館に連れて行くようになって、カクレクマノミを知った。きれいなオレンジ色のためか、言葉をろくに話せなかった頃から子供が興味を示した魚だ。私も姿は何となく知っていたが、恥ずかしながら「カクレクマノミ」という名前は知らなかった。

このカクレクマノミが主人公になっているのが、アニメ映画「ファインディング・ニモ」である。日本のTVアニメで育った私は、最近アメリカでは主流となった3Dの画は妙に生々しく感じられ、とうてい親しめないだろうと思っていた。が、この作品は、キャラクターが人間ではなく海の生き物のためかあまり違和感がなく、何よりストーリーが楽しめた。

ちょっと英語を調べてみると、カクレクマノミは、clownfish あるいは anemone fish といい、イソギンチャク sea anemone と共生する魚とのこと。派手な色合いから clown という語が使われたという。また「アネモネ」というと花を連想するが、イソギンチャクを英語でこう言うとは知らなかった。

こうしたことを知って、主人公の Nemo は anemone から取ったのかと思ったが、ネットで調べたらそうではなく、私も子供の時に読んだことのある ジュール・ヴェルヌ Jules Verne の「海底二万里」 Twenty Thousand Leagues Under the Sea に出てくる「ネモ船長」 Captain Nemo から取ったのだという。ついでに、nemo はラテン語で "no one," "nobody" という意味とのこと。anemone の方は "wind flower"という意味のギリシャ語に由来するという。

Nemo の日本語版表記は、ローマ字風の読みからして「ネモ」になりそうなものだが、そうしなかったわけである。「ネモ船長」を知っている人には、そのイメージが強すぎてふさわしくない、という判断があったのだろうか。まあ、この映画のことは最初から「ニモ」で聞き慣れていたので、いまさら「ネモ」とされても落ち着かないが。

ただ、「ファインディング~」と、原題をそのままカタカナにしたタイトルは、どうもいただけない。幼い子供は、たぶん何のことかわからないだろう。私は最初見たとき、一瞬「ファイティング」かと思ってしまった。

そういえば、いつのころからか原題が英語の映画のタイトルは、ほとんどみなカタカナ表記になってしまった。「クレイマー、クレイマー」など噴飯ものだし、農村を描いた作品かと思った「ザ・ファーム」もあった(配給したほうもさすがにまずいと思ったのか、「法律事務所」というサブタイトルをつけているのがかえっておかしい)。

大人向けの映画はもう仕方がない傾向なのかもしれないが、少なくとも子供向けの作品では、知恵を絞っていいタイトルを考えて欲しいものだと思う。

そういえば、映画のタイトルではないが、「くまのプーさん」に出てくるキャラクターは、石井桃子による原作の訳では、「トラー」、「コブタ」、「フクロ」など、日本語として通る名前がつけられていた。しかしディズニーのアニメが広まるようになって、原音をカタカナにした「ティガー」、「ピグレット」、「オウル」となり、こちらの方がもう主流になったといってもいいようだ。

他のキャラクターでも、私が子供の時は「うさこちゃん」だったウサギは、いまは「ミッフィー」である(オランダ語の原作での本来の名前はこれとも違う)。カタカナ語がますます広まる今の時代、固有名詞の定訳も、容赦なく改変されるのを免れないようだ。「くまのプーさん」も、そのうち「ウィニー・ザ・プー」となるのだろうか。


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