It's the economy, stupid!

前回触れた TIME誌の特集 "The Lone Ranger" の記事に、"IT'S THE PRESIDENT, STUPID" という小見出しがあった。この "(It's ...), stupid." という言い回し、説明を載せている辞書はほとんどないのではと思うが、すっかり定着した感があり、知っていて損はないはずだ。

この表現が使われるようになったのは、1992年のアメリカ大統領選挙で、クリントン候補の選挙戦を仕切った James Carville という人物が、争点にすべきこととして "It's the economy, stupid." とプレートに書いて掲げていたのがきっかけだという。

湾岸戦争に「勝利」したブッシュ大統領(41代、現在の43代の父親)を前に、民主党は一時、到底勝ち目はないと見られていた。予備選に立候補したのはみな知名度が低く、「白雪姫」をもじって the seven dwarfs と揶揄されていたのを私も覚えている。しかしブッシュ大統領は経済政策でつまずき、予備選を勝ち抜いたクリントンに本番の選挙で敗れてしまった。

Carville のプレートに書かれていたのは、実際には "The economy, stupid." という言い回しだったそうだが、クリントンの予想外の勝利は "It's ..." という形でこのフレーズをも有名にし、その応用とあわせて、10年以上たった今に至るまで使われているわけである。実際に使われた例は、インターネットの検索を使えば山ほど出てくるはずだ。

この言い回し、日本語としては「いいかい、~が大切なんだよ」「~が問題なんだよ、当たり前だろ」「何が大事かって?そりゃ~でしょ」など、状況に応じて訳せばいいのではないかと思うが、いつだったか、「重要なのは経済だ、馬鹿者!」というような訳を何かの雑誌で読んだことがある。いくらなんでも直訳にすぎるのではないだろうかと思った。

なお stupid といえば、ビジネス、ITやデザイン、あるいは言葉の使い方などほうぼうで説かれるという「KISSの法則」 KISS principle ("Keep it simple, stupid." あるいは "Keep it simple and stupid." "Keep it short and simple.") というものもある。


・辞書に出ていない表現(一覧)