mano a mano, mano y mano

1989年の映画「バットマン」にちなんで、もう1回書くことにする。この作品は、タイトルロールには似合わないと思われていたマイケル・キートンの意外(?)な好演と並んで、やはりジャック・ニコルソンの怪演が印象的だった。英語面では、mano a mano という表現を知った作品でもある。もっとも映画のセリフでは、mano y mano となっていた。

ニコルソン演じる悪人ジョーカーが、テレビを電波ジャックしてバットマンに対して直接対決を呼びかけるシーンに出てくる。

Just the two of us. Mano y mano.

知らない表現だったが、字幕で訳されていたのか、状況から想像がついたのか、今になっては記憶にないが、とにかくその場で「1対1」というようなことだとわかった。ニコルソンの独特な口調もあって印象に残り、映画館から帰って辞書を引いたが、それらしい綴りの表現は見あたらない。代わりに見つかったのが mano a mano で、ニコルソンのセリフはこの変型なのだろうかと考えた。

英英辞典の定義を読んでみよう。mano-a-mano という綴りもある。

- (plural manos a manos) a face-to-face confrontation between opposing people or sides

- (noun) a head-on conflict or direct competition; a duel.
The other candidates seemed to disappear as the public debate became a heated mano-a-mano between the two leading candidates.

- (adj) in close confrontation.
We sat tensely in the courtroom while the mano-a-mano struggle ensued between the two skilled lawyers.

- Origin: < Sp: on an equal footing, without advantage (to either of two contestants); lit., hand to hand

Wikipedia はこの表現を見出し項目にしていて、その中に次のような説明があった。ただこの項目には This article does not cite any references or sources. という編者の注もついていて、どこまで正しいといえるものなのかはわからない。

- This term has been adopted in English with similar meaning, possibly by Ernest Hemingway. The English adoption can be likened to the phrases "one on one", "head to head", or "single combat".

- It is commonly misunderstood as a cognate by English speakers who think that the term means "man to man". This confusion is increased by the fact that this is the right meaning in Portuguese.

(http://en.wikipedia.org/wiki/Mano-a-mano)

さらに、Wikipedia には、「バットマン」のセリフにも言及があった。

- Jack Nicholson mistakenly refers to the phrase as "mano y mano" (hand and hand) in his characterization of The Joker in the film Batman (1989).

つまり、ニコルソンが mano y mano といったのは誤用ということらしい。しかし、この言い方をネットで検索すると、それなりの数がヒットする。言葉の説明をしている記事もあるが、それを読んでも、「バットマン」で使われて以来広まったのか、それとも、実は誤りにせよニコルソン以前から使われていたのかなど、詳しいことはわからなかった。

ヒスパニック系が多いアメリカでもあり、スペイン語として間違いなのであれば、チェックはされなかったのだろうか。書かれたセリフではなく、ニコルソンのアドリブで、気づくスタッフがいなかったということか。いずれにせよちょっと不思議である。ヒットした内容をもっと調べれば、何か情報があるのかもしれない。

ところで冒頭にも書いたように、スーパーヒーローらしくないマイケル・キートンは、ミスキャストだという事前の声もあったが、出来上がった映画を観たら、うまく演じていると思った。

バットマンは、幼少時に目の前で両親を殺されて心に深い傷を負い、昼はセレブ生活を送る億万長者だが、夜になるとコウモリの姿で超法規的に正義を執行するという、複雑なキャラクターである。

キートンはそんな主人公を、ある時は暗く、ある時は一種の軽みを見せて描いていた。ティム・バートン監督の造形もあるだろうが、キートンの持ち味も大きいだろう。最近作の「バットマン ビギンズ」のクリスチャン・ベールよりも個人的には好みである。キートンは日米摩擦を描いた映画「ガン・ホー」という映画にも出ていたので、次回はこれについて書いてみたい。

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