スミス都へ行く (Mr. Smith Goes to Washington)

英語に触れていると、小説や映画のタイトル、それに聖書やシェイクスピア、マザーグースなどの一節が、もじって使われている例に出会うことがある。先日取り上げたノンフィクション "Rise of the Vulcans" には、アメリカのチェイニー副大統領について、映画「スミス都へ行く」 Mr. Smith Goes to Washington のタイトルを使った記述があった。

フランク・キャプラ Frank Capra 監督による1939年のこの映画は、理想に燃えた若手政治家が上院議員となって中央政界に行き、腐敗を暴くという内容だ。ジェームズ・スチュワート James Stewart 演じる主人公が、filibuster の演説をするシーンは、英語のスピーチとして見ても圧巻である。

このタイトルが出てくるのは、フォード大統領が1976年の大統領選挙で敗北したことを受けて、当時、大統領の首席補佐官をつとめていたチェイニーが故郷に戻ることになった場面である。

The Cheneys were moving from Bethesda, Maryland, back to Casper, Wyoming. After serving as the youngest White House chief of staff in history, Cheney was leaving in humble fashion, a Mr. Smith Goes to Washington in reverse.

チェイニーが中央政界から去ることになった様子を、この映画のタイトルにひっかけて描いているわけだが、in reverse の使い方や不定冠詞がつくことも参考になる文だ。

英文記事の見出しなどで、 "Mr. X goes to Y" といった書き方を時おり見かけることがある。もちろんこれ自体、ごく普通の英文ではあるが、多分にこの映画のタイトルが影響しているのでは、と考えているが、どうだろうか。

ところでスペリングの確認のためにネットを参照したところ、この映画に先立って、同じキャプラ監督による "Mr. Deeds Goes to Town" という1936年の映画があることを知った。

遺産相続が決まってニューヨークに出てきた Gary Cooper 演じる善人 Mr. Deeds の周囲に、金目当てにさまざまな人が集まってくる、という内容とのこと。"Mr. Smith..." は明らかにこの先行作を意識しているようだ。邦題は「オペラ・ハット」だが、これだと「スミス都へ行く」との関連は想像がつかない。


スミス都へ行く
スミス都へ行く
ジェームス・スチュアート, ジーン・アーサー, クロード・レインズ, エドワード・アーノルド, フランク・キャプラ
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

参考エントリ:
適格であっても unqualified
the Beltway
「都落ち」の英語表現
「住めば都」はThere's no place like home. か