ドビュッシーの「海」

私は海が近いわけでも山が近いわけでもない、中途半端な都会の郊外に育ったが、両親が海辺の出身のせいか、DNA的には完全に海志向である。

子供の時、親の田舎にある小さい山から見下ろした海は、本当に青く、広く、はるかに船が浮かぶさらに先に伸びる水平線はかすかに湾曲し、地球は丸いことを実感した。すでに地球が丸いことを知っていたのでそう感じたのにすぎないのだろうが、この時の印象はよほど強かったようで、大人になっても何回か夢に出てきた。

これまで訪れた外国についても、その時々の特別な体験にかかわるものを別にすれば、海にかかわる風景は印象深く思い出す。ギリシャの田舎町から見た、神話の神が出てきそうな紺碧の海。中世のコンスタンティノープル攻防戦を空想せずにはいられなかった、イスタンブールのボスフォラス海峡とマルマラ海。内戦の銃弾の痕が残るビルのかなたに夕日が沈みゆくベイルートの海。

さて、海といえば頭に浮かぶのが、船乗りになるのが夢だったというドビュッシーの「海~3つの交響的素描」という交響詩だ。名曲である。

この曲は3部からなり、それぞれ「海の夜明けから真昼まで」「波の戯れ」「風と海との対話」というタイトルがついている。第1部はもともと、コルシカ島沖にある島の名前を使って「サンギネールの美しい島々」とするつもりだったという。なぜ構想を変えたのかはわからないが、特定の場所の描写音楽と取られるのを嫌い、あくまで自分なりの海を創造したのだと表明したかったのだろうか。

お気に入りの曲であり、さまざまな録音を聴いたが、フランス語圏の演奏家による「お国もの」としては、アンセルメ、マルティノン、デュトワの3人の指揮者によるものが「御三家」的な扱いを受けている。個人的にはアンセルメとデュトワは世評ほどいいとは思えない。マルティノンはスタンダードな名演だと思う。

フランス人指揮者のブーレーズは、非フランス語圏のオーケストラを使って2回録音している。どちらもいい演奏だと思うが、最近、1回目の録音が、LPレコードで出たときと同じ北斎を使ったデザインでCD化されたのがうれしい。

ミヒャエル・ギーレンは一部で根強い人気のある指揮者だが、やはりアメリカのオーケストラを使って、「海」を録音している。日本の音楽評論家は無視しているようだが、私は大変気に入っている。

また人気指揮者のラトル(イギリス人)がベルリン・フィルを指揮した最近のCDも、「お国もの」ではないが楽しめた。

同じ "La Mer" というタイトルを持つ音楽といえば、シャルル・トレネが歌ったシャンソンがあるが、こちらの邦題は「ラ・メール」の方が通りがいいようだ。

ついでなので、海にちなんで以前メモした英語表現をひとつ。海洋ものの本にあった次の言い回しは、「耳抜き」にあたるものだと思う。

Once in the escape lock, be certain to hold your nose and blow hard to relieve pressure in your eardrums.


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