tin ear, "Stuff happens."

あくまで個人的な見方だが、The Economist 誌の記事は一般に TIME 誌に比べて短いものの、内容はより締まっていると感じることがある。

画像興味があったり、自分が少し知っていたりする分野で比べると、TIME の記事は時に bloated (水増し)と思える時があるほか、良くも悪くもアメリカの視点を感じさせるのに対し、 The Economist はもう少し引いたところに目を置いているといえばいいだろうか。もちろん、ケースバイケースだが。

表紙も、人気下降中のブッシュ大統領とブレア首相のうつむく姿に "Axis of feeble" と書いた The Economist の最近の号は笑えた。もちろん有名になったブッシュの言葉 "axis of evil" のもじりである。

画像また今でも覚えているのが、ブッシュの共和党が勝った4年前の米中間選挙だ。説明的だった TIME のカバータイトルに対して、The Economist は "By George!" だけ。単に名前にひっかけただけのようで、しかし何かの意図をこめてこの感嘆句を使っているようでもあり、印象的だった。

さて先日、日本の新聞で、十数か国で行われた調査でアメリカの好感度が軒並み下がったという記事を読んだが、The Economist のサイトを見ていたら、"Mind your language" (副題 "A little politeness goes a long way")という記事があり、まさにその調査のグラフが目に飛び込んできたので、目を通してみた。

最初の方に、

America's deputy assistant secretary for public diplomacy is far from being the only official in George Bush's administration who has a tin ear when it comes to public diplomacy.

とある。この tin ear は「音痴」ということだが (insensitivity to musical or speech sounds; an inability to distinguish differences in pitch)、ここで使われているのは、もうひとつ意味である insensitivity to the appropriateness or subtlety of language の方だろう。

記事はさらに、

Plenty more tin ears and sharp tongues belong to bigger heads higher up in the administration.

として、ラムズフェルド国防長官、ボルトン国連大使、さらにブッシュといった指導者を俎上に、アメリカの対外的なデリカシーのなさ、鈍感さを突いていく。

ラムズフェルド長官のところでは Donald (“stuff happens”) Rumsfeld と書かれているが、このカッコ内の引用句は、3年前、イラクでの大規模軍事作戦が終わったあと掠奪が増えた際に長官が言った "Stuff happens." のことだ。「そりゃ、そんなこともあるさ」といった感じだろうか。この時ラムズフェルド長官は、この言葉とあわせて、

"Freedom's untidy, and free people are free to make mistakes and commit crimes and do bad things."

とコメントして物議を醸したのだった。「掠奪だって起きるわさ」ではすまなくなったその後のイラク情勢はご存知の通りである。

その後の部分の、ブッシュ大統領に触れたくだりはあまり難しい言葉はないが、先日のイラク電撃訪問を取り上げている。イラクの首相が正式政府の発足にあたってアメリカの手先と思われないように距離を置きたがっているのに、一方的に押しかけ訪問したとして、 "It is sometimes bad manners to drop in uninvited." と辛口に評している。

さて、冒頭に戻って、今回のアメリカの好感度調査だが、ナンバーワンの国、つまりアメリカに好感を持っている度合いのもっとも高い国は、ダントツで日本、63パーセントだった。


参考エントリ:
「背景知識・雑学」一覧