ボブ・ウッドワードの新著

イラク問題でブッシュ大統領が躓いていることについて書いたが、これまで何回か取り上げた "The Secret Man" の著者 Bob Woodward が新著 "The State of Denial" を出した。イラク問題で苦境に陥ったブッシュ政権を描いているとあって、中間選挙を前に話題になっている。

まだ本は買ってはいないのだが、Washington Post 紙と Newsweek 誌のサイトに掲載された excerpts を読んだ。Newsweek はアメリカ本国版の雑誌には抄録を掲載したが、日本国内で手に入るアジア版にはない。ネットを使えば、こうした不公平も解消される。

この本は、同じ著者が、911テロ以降のブッシュ政権の戦争を描いた "Bush at War" と "Plan of Attack" に続くノンフィクションだ。この2作について私は、出来事を客観的に記述するように努めたのかもしれないが、その点で「ブッシュ政権寄り」の印象も与えかねないように感じた、というようなことを先日書いた。

サブタイトルからもわかるように、前2作の続編にあたる新著は、イラクが混迷の度を深めていく時期を取りあげていることもあり、はるかにブッシュ政権に厳しい内容となっているようだ。

サイトでの抜粋を読んだだけだが、ブッシュ政権のイラク情勢への対処は、書かれていることが事実としたら、この上ない「組織の失敗」の事例のような印象すら受ける。

現場からの情報や意見に耳を傾けない上層部。悲観的な見通しは部下が上司に直言できなかったり、握りつぶされたりする一方、公にされ続ける楽観的見通し。省庁間の連携のなさや対立。そして、あるべき姿の論議からよりも、内政上の観点から立案されるイラク政策や政権の人事。

印象的な人物は、Rumsfeld 国防長官である。他人の意見に耳を貸さない独断専行と秘密主義、また無神経と無責任さが際立って描かれている。第2期ブッシュ政権の発足にあたって、ブッシュの側近も国防長官の入れ替えを主張するが、結局ブッシュは却下する。

長官本人に対する著者のインタビューも出てくるが、ここでウッドワードは客観的な描写から離れて、ラムズフェルドの考え、ひいては人物に対し厳しい見方を示している。ウッドワード個人の見方をよりにじませている点も、前2著との違いが感じられた。

ちなみに、前著ではウッドワードの単独インタビューに応じたブッシュ大統領は、今回その機会を与えなかったということだ。

「歴史上、今の時期は just a comma になるだろう」という大統領の発言を先日紹介したが、歴史といえば、今のイラクの状況はベトナム戦争のテト攻勢 Tet Offensive と似てきたようだという、コラムニスト Thomas Friedman の意見に、ブッシュ自身も同意を示さざるを得なくなっている。quagmire (泥沼)という、ベトナム戦争を想起させる言葉も、最近また目にするようになってきたように思う。

Newsweek に掲載された抄録はこちら。
http://www.newsweek.com/id/44886

こちらでは、著者ウッドワード本人のインタビューが聞ける。
http://www.pbs.org/newshour/bb/politics/july-dec06/woodward_10-04.html

中間選挙を控えたブッシュのイラク政策について、New York Times はこんな社説を書いている。「ヘラルド・トリビューン」に転載されたものである。
http://www.iht.com/articles/2006/10/22/opinion/ediraq.php


State of DenialState of Denial
Bob Woodward

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